マイナビDOCTOR 編集部からのコメント
来年開催の東京五輪・パラリンピックにおいて、開催地の東京のみならず全国各地での感染症対策が重要となります。多くの観戦客が訪れるのは東京ですが、各国選手団のキャンプ地は全国各地に点在しているためです。麻疹・風疹等のさらなる減少やマラリア等の海外で常時発生している感染症の治療体制の整備など、自治体と医療機関が連携して取り組む必要がありそうです。
東京五輪・パラリンピックを来年に控え、国際感染症学が専門の加藤康幸氏(国際医療福祉大学教授)が9日、都内で講演し、五輪の選手団が全国でキャンプを行うことから、東京都以外の自治体・医療機関も感染症対策に取り組む必要性を指摘した。
講演は日本化学療法学会のシンポジウム「これからの輸入感染症にどう取り組むか?」で行われた。
加藤氏は、近年の夏季五輪では、アトランタ(1996年)からリオデジャネイロ(2016年)まで感染症に関する大きな問題が生じなかったことを紹介し、「マスギャザリング(一定期間、限定された地域において、同一目的で集合した多人数の集団)としては感染症のリスクは低い」と述べた。
一方で、各国選手団のキャンプ地(ホストタウン)が全国に点在していることから、「全国津々浦々の小さな町までも、輸入感染症のリスクがある」と指摘。リスクに備え、2017年10月に厚生労働省が「感染症のリスク評価」の事務連絡を全国に発出していることを紹介し、自治体と医療機関が連携して感染症対策に取り組む必要性を強調した。
今後の対策としては、①麻疹・風疹等の予防接種可能疾患のさらなる減少、②マラリア等の海外で常時発生している感染症の診断・治療体制の整備、③1・2類感染症に対する備えの充実―を挙げるとともに、特に「飛沫感染する麻疹・風疹の動向に注目している」と述べた上で、「五輪をきっかけに感染症対策に取り組むことで、2020年以後にレガシーを残したい」と期待を示した。
■東京都以外の医師「自治体の反応がなく困っている」
東京都以外のフロアの医師からは「五輪に向けた感染症対策について自治体に問い合わせても何の反応もないので困っている」との声が上がったのに対し、加藤氏は「自治体の中で感染症の相談窓口が複雑になっている場合があるので、この機会に相談窓口を見直すのもリスク評価になる」と提案した。
出典:Web医事新報