【日本の医療のグランドデザイン2030】日医総研が医療の将来ビジョンを公表|業界ニュース

【日本の医療のグランドデザイン2030】
日医総研が医療の将来ビジョンを公表

マイナビDOCTOR 編集部からのコメント
日本医師会総合政策研究機構により、約20年ぶりに新たな医療の将来ビジョンが公表されました。医療を「平時の安全保障」を提供するインフラと位置づけ、多職種連携によるセーフティーネットの強化や医療サービスを中核とした地域の活性化などを提唱しています。日本医師会の横倉義武会長はこの将来ビジョンがまとめられた「日本の医療のグランドデザイン2030」を「出発点」と述べ、さらに深化させていく考えです。

2030年に向けた医療の将来ビジョンを記した「日本の医療のグランドデザイン2030」の表紙
2030年に向けた医療の将来ビジョンを記した「日本の医療のグランドデザイン2030」の表紙

日本医師会総合政策研究機構(日医総研、日本医師会のシンクタンク)はこのほど、2030年に向けてあるべき医療の将来像を描いた報告書「日本の医療のグランドデザイン2030」を公表した。「社会における人間の多様性を容認し、いかに対応していくべきか」というヒューマニズム的視点から、年齢に応じた医療のあり方、まちづくり、教育など、さまざまな分野で医療が果たすべき役割と方向性を論じている。大部にわたるグランドデザインの概略と特徴的な部分を抜粋して紹介する。

新たな医療の将来ビジョンの公表は約20年ぶり。日医が坪井栄孝会長時代の2000年に発表した「2015年 医療のグランドデザイン」は、国民の生存率、自立率、就業率の3つの向上を謳い、取り組むべき社会保障制度改革の骨格を論じたものだった。先端医療(臓器移植、遺伝子医療など)や健康増進のための治療を民間保険と個人の貯蓄でカバーする「自立投資」の概念など、当時としては大胆な改革も提唱し、賛否を呼んだ。

■日医の行動計画を年内にも公表
「2030」は3部構成で、まず第1部で「あるべき医療の姿」を人類的視点から俯瞰して考察を加えている。第2部では、各執筆者が独自の問題意識に基づき、日本の医療が直面している現状と課題を分析している。第3部は第1部の内容を実現するための日医の行動計画となるが、このほど公表された冊子には盛り込まれておらず、年内にも提言の形で公表される予定だ。

■経済合理性優先の社会情勢に危機意識
3月27日に会見した日医総研の澤倫太郎研究部長は、「2030」に通底するテーマを「多様性への寛容あるいは対応」だと説明。細谷辰之主任研究員も「中心を貫くエスプリは『人はひとたび生を受ければ、無条件で尊重され守られるべき存在である』ということに尽きる」と述べた。経済合理性が優先され、寛容さが損なわれがちな社会情勢への問題意識は、日医総研所長の横倉義武氏(日医会長)による巻頭言の「医学の社会的適応である医療は、また社会的共通資本であるべき」「悪意のある人や犯罪者ですら、医療に守られる存在であらねばならない」といった一節にも窺える。

■医療は平時の安全保障
第1部では、医療を「平時の安全保障」を提供するインフラと位置づけ、多職種連携によるセーフティーネットの強化や、医療サービスを中核としたまちづくりと地域の活性化などを提唱している。

「人生100年時代」に向けては、健康寿命と平均寿命のギャップを「経済的負担の増加」という文脈ではなく「個々のヒトの幸福の劣化」の問題として語るべきと指摘。できるだけ多くの人が孤立することなく、幸福に人生を終えられる環境をつくるという視点から、高齢者の社会参加を促し、かかりつけ医を軸に医療職が連携して健康の維持をサポートすることを提言している。

■被災者支援、最低限を満たすだけでは不十分
「有事の医療」にも多くの紙幅を割いている。自然災害対応では、東日本大震災を機に明らかになった医療チームの増加や対応の多様化などの問題を挙げ、平時から災害時までをつなぐシステムの構築を訴えている。被災住民の生活支援についても、医療者が「最低限の条件を満たせばよい」という判断に至ることが多いと指摘した上で「そうした認識は好ましくない」とし、医療界が早急に解決策を打ち出すべきとしている。世界的な問題となっている医療機関へのサイバー攻撃やテロリズムへの備えも「急務」と位置づけている。

出典:Web医事新報

「グランドデザインは最終成果物ではなく出発点」と述べ、さらに深化させていく考えを示した横倉氏(3月27日)

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