医師が転科をする理由とデメリット|医師転職ナレッジ

医師が転科をする理由とデメリット

医師の転職はめずらしいことではありませんが、転科という道を選ぶ医師は少ないのではないでしょうか? 転科は前職の経験やスキルが必ずしも役に立つとはかぎらないうえ、入職後に相当の勉強と努力が求められます。それにもかかわらず、なぜ転科を選ぶ医師がいるのか――今回は、転科を通して得られるメリットとデメリットを紹介します。

1.医師が転科をする理由とは?

ほとんどの医師は、内科や外科、小児科、産婦人科、麻酔科、放射線科、精神科など数多くの診療科の中から研修医時代に選択をし、生涯その診療科に在籍するのではないでしょうか。まったく未経験の診療科へ転科をする場合、転科自体が難しいのみならず、一から勉強し直す必要もあります。そんな大変な思いをしてまで、転科する理由にはどのようなものがあるのでしょうか。

1-1.ワークライフバランスを重視したい

外科や産婦人科、麻酔科など、手術を業務とする診療科の労働環境はハードになる傾向があります。手術が予定時間どおりに終わらないことは少なくなく、長引くケースが大半なうえ、急患の対応を求められることもあります。過酷な労働環境に陥りがちな診療科に在籍する医師が、プライベート時間を確保するために比較的穏やかに働くことができる診療科へ移ることを検討するケースがあります。

1-2.別の診療科に興味がわいた

日々医療行為に従事するなかで、他科の診療内容に興味を抱くようになることも当然あります。たとえば、外科医として手技を研鑽することに注力していた医師が、患者さん一人ひとりと向き合ったり幅広い症例を診たりする内科的な診療内容に魅力を感じるようになるといったようなケースです。

ただし、診療科によって転科の難易度は大きく異なることに注意をする必要があります。消化器外科から消化器内科への転科の場合は、共通する専門知識が多いために転科のハードルはそれほど高くありませんが、消化器外科から精神科や耳鼻科などへの転科は難しいでしょう。

1-3.人間関係に悩んで

診療科によっては、他科の医師や看護師などの多数の医療スタッフとコミュニケーションが求められます。過酷な労働環境から職場の雰囲気が険悪になったり、派閥争いに巻き込まれたり、人間関係のトラブルを経験した医師が、他職種との関わりをそれほど必要としない産業医や健康診断医などに魅力を感じるケースがあります。

1-4.年収アップを目指して

一般的に、自由診療に携わる医師や希少なスキルを活かせる医師の給与は高水準になります。具体的な診療科の例では、自由診療は美容外科や美容皮膚科、希少なスキルを活かせる診療科は心臓外科や消化器外科などが該当します。希少なスキルや高い技量が求められる診療科への転科は容易ではありませんが、報酬の大幅アップを目指して挑戦する医師もいます。

2.転科で成功するポイントとは?

転科成功の秘訣は「なぜ転科したいのか」という軸をしっかりと認識することです。転職の目的が「忙しさを解消したい」ということならば、診療科を変更しなくても、勤務先を変えるだけで問題を解決できるかもしれません。「何のために転科をするのか」、「それは転科しなければ達成できないことなのか」を検討しましょう

そのうえで「どうしても転科をしたい」と決意を固めたなら、できるだけ若いうちに行動に移しましょう。医療機関がまったく未経験の医師を受け入れることは稀ですが、将来性を考慮し、若い医師であれば検討してもらえる可能性が高まります。

転科を経験した医師に成功事例を聞くことも重要です。医師同士のネットワークを使って、成功体験を聞ければ理想的ですが、転科を選ぶ医師はそれほど多くありません。

知り合いがいない場合、転職エージェント(特に転科に強いエージェント)に登録して成功事例を聞くのがおすすめです。何科から何科に転科をし、どのようなキャリアを歩んでいるのかなどの情報を得ることができます。また知り合いであれば少々聞きづらい、転科の失敗事例とその原因について尋ねることもできます。

3.転科のデメリット

転科には以下のようなデメリットを念頭に置いておく必要があります。

・一から勉強をする必要がある
・前職までの経験が活かされない診療科の場合、年収が下がる可能性がある
・年下の医師が指導医や上司になる可能性がある
・現在の診療科のキャリアが断絶する

転科はゼロからのスタートです。未経験の診療科の専門知識を一から勉強し、スキルを身につけていく必要があります。前職との関連度合いや本人の志向・適性にもよりますが、いずれの診療科に転科をした場合でも、入職後相当の勉強量と努力が必要になることは言うまでもありません。

また転科後は、自分よりも年下の医師に指導を受ける可能性が高くなります。過去にどれほど立派な実績や経験があったとしてもそのキャリアは断絶され、新人医師として指導されます。いち早く業務に慣れ人並みのレベルに追いつくためにも、謙虚な姿勢で業務に取り組む必要があるでしょう。当然、年収も新人同然の扱いとなり、前職よりも大幅に下がる可能性も考えられます

このように転科はそれ自体が難しいだけでなく、さまざまなデメリットをはらんでいます。これらのマイナス面を受け入れてでも転科をしたいのかどうか、転職前にしっかりと意思を固めておきましょう。

文:太田卓志(麻酔科医)

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