新型コロナ禍の熱中症予防対策とは?~横堀將司先生インタビュー|スペシャルコラム

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新型コロナ禍の熱中症予防対策とは?
~横堀將司先生インタビュー

新型コロナの感染対策としてマスク着用が重要視される一方、夏季の熱中症対策にも注意をはらう必要があり、両者のバランスをいかにとるかが課題となっています。6月1日には、日本救急医学会、日本臨床救急医学会、日本感染症学会、日本呼吸器学会の合同ワーキンググループより「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」が出されました。コロナ禍での熱中症対策のポイントについて日本救急医学会・熱中症および低体温症に関する委員会委員長の横堀將司先生に聞いたインタビューをWeb医事新報よりお届けします。

熱中症を防いで搬送先選定困難事例増加の回避を

4学会で提言を出した経緯を教えてください。

横堀將司(よこぼり しょうじ):日本医科大学付属病院救命救急科部長。1999年群馬大卒。2005年日本医科大院修了。米国マイアミ大脳神経外科客員研究員、日本医科大准教授などを経て、20年同大学院教授。専門は脳神経外科救急、体温管理療法。日本救急医学会・熱中症および低体温症に関する委員会委員長。
横堀將司(よこぼり しょうじ):日本医科大学付属病院救命救急科部長。1999年群馬大卒。2005年日本医科大院修了。米国マイアミ大脳神経外科客員研究員、日本医科大准教授などを経て、20年同大学院教授。専門は脳神経外科救急、体温管理療法。日本救急医学会・熱中症および低体温症に関する委員会委員長。

換気と室内温度、マスクと水分摂取、暑熱順化を心がけ
フィジカルディスタンシングに配慮しつつ
熱中症弱者の社会的孤立を防ぐことが重要

厚生労働省は、フィジカルディスタンシング(物理的に人と人との間の距離を取ること)、外出時のマスクの着用など、新型コロナを想定した新しい生活様式を求めています。ところが、エアコンをつけながらも室内を換気しなければならないなど、熱中症対策と感染症対策にはジレンマもあります。救急医療と感染症、呼吸器の専門家が協力して、新しい生活様式下の熱中症対策について科学的に検証し、コンセンサス・ステートメントを出したいと考えました。

熱中症も新型コロナウイルス感染症も発熱疾患です。今夏は、熱中症で救急車を呼んだとしても、コロナ疑いとして扱われる可能性があります。それが、搬送先選定困難事例の増加、救急医療の疲弊やひっ迫につながります。熱中症は予防ができる病気ですから、救急医療の混乱を防ぐためにも、感染予防をしつつ熱中症は防いで欲しいという思いがあります。

提言①では、室内の過ごし方について注意喚起しています。

「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」より
「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」より

総務省消防庁、日本救急医学会のデータを見ても、熱中症が最も多く発生している場所は室内、それも住居内です。新型コロナの予防対策では、いわゆる3密を避け、頻回の換気が推奨されていますが、そのために室内温度が上昇してしまうことも考えられます。すだれなどで直射日光の照射を避けることに加え、部屋の温度をこまめに確認することが重要です。

マスク着用時の運動で心拍数と呼吸数が1割増加

職場でのマスク着用について、産業医は、どのようにアドバイスしたらよいのでしょうか。

マスク着用の有無に関わらず、原則として、暑さ指数(WBGT:湿球黒球温度)が31℃以上になったら屋外での作業や運動は避けるべきです。
米国の研究では、一般的なサージカルマスクを着けてジョギングマシーンで運動した場合、5~10分後から、非着用時に比べて約1割心拍数と呼吸数が増えることがわかっています。マスク着用時には体に負荷がかかるので、これまで以上に屋外作業を控えたり、こまめに休憩を取るようにしてほしいです。

ただ、サージカルマスクは、飛沫を広げないためにするもので感染防御効果はありません。周囲の人とフィジカルディスタンシングが取れるのであれば、マスクを着用する必要はないわけです。

一方、防塵マスク、N95のような高規格のマスクの着用時には、サージカルマスクよりもさらに1割心拍数が上昇します。高規格のマスクは、汗で濡れると通気性が悪くなり呼吸がしにくくなりますから、汗を拭き取るようにすると共に、体への負荷がかかる労務は避けるように配慮してください。

小中高校での体育、部活動の注意点を教えてください。

WBGT 31℃以上の屋外での運動は中止すべきなのは同様です。中国では、体育の持久走の際にマスクを着けていた中学生が3人亡くなりました。そのうち1人は、N95マスクを着けていたようですが、運動するときに高規格のマスクを使うのは危険です。

熱中症と感染症の予防を考えると、集団での競技は避け、自分のペースでできる運動のほうが安全です。自分が苦しいと感じた時には運動強度を下げるか止めるように指導してください。

特に、体が暑さに慣れていない時期が危険です。どの年代の人たちも、フィジカルディスタンシングに注意しつつ、室内・室外での適度な運動で少しずつ暑さに体を慣らすことが大切です。

体温などの観察記録を推奨

かかりつけ医が、熱中症リスクが高い高齢患者さんに伝えてほしいことはどのようなことですか。

熱中症の多くは高齢者に多い非労作性の熱中症で、慢性疾患、常用薬がある人、日常生活が不活発な人はそのリスクが高まります。以前から熱中症対策として強調していることですが、高齢者は、口渇感がなくても水分摂取をすることが大切です。

フィジカルディスタンシングが求められる中で、特に危惧されるのが、独居高齢者、日常生活動作に支障がある人など、熱中症弱者の孤立です。見守り頻度の減少が熱中症の発症リスクや重症度を上げないように、配慮が必要です。

また、高齢の患者さんたちには、日頃から体調管理をしっかりしていただき、体温や体調、外出場所などを記録しておいてもらうと、発熱時に、熱中症なのか新型コロナウイルス感染症なのか、ある程度判断する目安になります。

今後、取り組んでいきたいことはありますか。

ワーキンググループの活動の第2弾として、『熱中症ガイドライン』のCOVID-19増補版(仮題)を7月初旬に出す予定です。コロナを想定した熱中症治療、患者搬送、環境整備に言及できればと考えています。日本救急医学会のホームページで公開しますので、ぜひご覧ください。

さらに、日本救急医学会・熱中症および低体温症に関する委員会としては、マスク着用時の運動や作業と熱中症発症に関するデータを取り、エビデンスを蓄積していきたいと考えています。
(聞き手・福島安紀)

出典:Web医事新報
※本記事は株式会社日本医事新報社の提供により掲載しています。

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