病院の開業にあたっては、開業後の患者数に影響する「立地条件」も重要な要素です。シリーズ「医師 開業への道のり」第9回となる今回は、後悔しない開業地選びのポイントについて医療経営コンサルタント・平田二朗氏が解説します。
開業地の立地性と市場性
開業候補地の選定は、開業したあとの患者数に大きく影響します。候補地選定の要素としては
①市場性(患者数予測)
②通勤可能性
③これまでの勤務先や患者さんとの関係性
④出身大学や医局との関係性
⑤出身地
⑥親元などです。
事業を新規に開設するわけですから、市場性がすべてに優先します。しかし何の縁もない地域で開業すれば、落下傘開業ということで、地元から敬遠されたり、医師会での評価を得られなかったりと、少し不安な要素が出てくるでしょう。
賃貸にせよ、自己所有方式にせよ、開業地の立地性と市場性は、はずすことのできない重要な要素です。それに加え、経済性は決定的に重要な要素となります。いくら市場性があり、すべての利便性が整っていても、賃料もしくは地価が高すぎては事業として成り立ちません。必要な診療をするためにはそれなりの広さが必要ですので、経済的な側面はある意味決定的な要素となります。いくら場所がよくても事業として成り立たない価格であれば、あきらめるしかありません。
「たら、れば」は失敗のもと
場所選びはさまざまな要素が絡み合うので、簡単に決められるものではありません。また、不確定な世界で事業計画を組むわけですから、新規開業にかかるリスクは、「たら、れば」でいい方ばかりを想定するわけにもゆきません。仮に失敗となると医師として立ち直ることができないような経済的な窮地に立たされることになってしまいます。だからと言って安ければそれでいいという単純な話でもありません。仮に慎重に選んで候補地を絞り込んだとしても、これまでの勤め先や大学医局との関係などで退職時期が遅ければ、不動産の取得や賃貸契約の時期が合わない場合もあります。
こうした複雑な要素とは別に、開業したい本人が優柔不断で、なかなか決断できないケースもあります。いろいろな候補地に目移りばかりして、決断に至らず、時間だけが経過してゆく場合は開業そのものをあきらめた方がいいと考えます。どこを選ぶにしても問題点やリスクはついてまわるものです。決断ができない人は事業家に向きません。それよりは、現在の勤務医か医局に在籍していた方が無難です。場所選びを確定させるということは、土地の取得や賃貸契約を結ぶということであり、後戻りはできません。金融機関からの借り入れは、当然ですが個人に相当なリスクがかかることとなります。医師人生がかかっているわけですから、慎重な決断が必要です。
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