マイナビDOCTOR 編集部からのコメント
今やどの企業でも問題となる「残業時間規制」の波が、ついに医師の世界にも押し寄せてきました。8月2日、厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」が初会合を開催したところ、「医師の残業時間を一律に規制すべきではない」「上限時間だけが独り歩きすれば、現場の混乱が起こりかねない」などの意見が出ました。検討会では2019年3月までに、これら多数の議論を取りまとめる必要があります。一体どうなるのでしょうか?
厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」(座長=岩村正彦・東大大学院法学政治学研究科教授)が2日に初会合を開催し、医師の残業時間規制の在り方などに関する議論を開始した。検討会は、政府が3月末に公表した「働き方改革実行計画」の内容を踏まえたもので、この日は、医師の残業時間を一律に規制すべきではないといった意見が出た。検討会では2019年3月ごろに議論の取りまとめをする方針だ。【松村秀士】
「働き方改革実行計画」では、罰則付きの時間外労働規制を設ける法律の施行から5年後をめどに、医師の労働時間を規制の対象にするとした。また、医療関係者が参加する検討の場を設け、19年3月をめどに医師の労働時間の短縮策などについての結論を得るとしている。
こうした方向性を踏まえ、同検討会では、▽新たな働き方を踏まえた医師に対する時間外労働規制の在り方▽医師の勤務環境の改善策―などを議論し、年明けごろに中間取りまとめをする。初会合であいさつした塩崎恭久厚労相は、「タスク・シェアリング(業務の共同化)やタスク・シフティング(業務の移管)を通じて医師の働き方は変わり得る。こういう方法についても幅広い観点から議論をいただき、特に将来の展望を持ってキャリア形成をしたいと思いながらも今の環境の下でできていない人が、生き生きと働くことができる環境の整備につながる提案をいただきたい」と述べた。
初会合では、厚労省が医師の勤務実態調査の結果を明らかにした。それによると、年間200日以上働く勤務医(正規職員)の41.8%が、1週間で60時間以上働き、その割合は他の職種と比べると最も高かった。
また、病院の常勤医の診療外時間などを含めた勤務時間は、男性が平均57時間59分で、女性が51時間32分。年代別では、男性は20歳代(64時間59分)が最も多く、年代が上がるにつれて週の勤務時間が減少。女性も最多は20歳代(59時間12分)で、おおむね年代が上がるにつれて週の勤務時間が減った。
委員からは、医師の残業時間を一律に規制すべきではないとの声が上がった。赤星昂己・東京女子医科大東医療センター救急医は、「これ以上、働きたくない人もいるし、自己研さんのためにもっと働きたいという人もいる」とした上で、「これ以上、働きたくない人が無理に働かなくて済む環境をつくり、もっと働きたい人が評価されて、かつ健康を脅かす労働時間にならない仕組みができればいい」と述べた。
また、福島通子・塩原公認会計士事務所特定社会保険労務士は、「上限時間(の規制)だけが独り歩きすれば、現場の混乱が起こりかねない。現場の状況をきちんと把握して、(勤務環境が)どうすれば改善されるのか、道しるべを示すことが大切」だとした。
このほか、「今ある仕組み、例えば医療勤務環境改善支援センターなどを活用することが大切」(市川朝洋・日本医師会常任理事)、「大学病院では診療のほかに教育と研究のミッションが課せられており、それらの時間を切り分けられないことが問題を複雑にしている」(山本修一・千葉大医学部附属病院長)といった意見が出た。
出典:医療介護CBニュース