マイナビDOCTOR 編集部からのコメント
病気に限ったことではありませんが、重篤な事態に陥る前に、物事を改善させるのは大事なことです。
人口当たりの人工透析患者数が先進主要国の中で最も多い「ニッポンの現実」に、ついに厚労省がメスを入れる形になりました。
厚生労働省は10日、重症化予防ワーキンググループ(WG)が取りまとめた報告書を公表した。糖尿病性腎症の重症化予防にスポットを当て、都道府県や市町村、後期高齢者医療広域連合、かかりつけ医、医師会などの役割や方向性などを提示。特に受療中断者に対しては、市町村と医師会、かかりつけ医らが連携する必要性を挙げている。【新井哉】
糖尿病を主な傷病として継続的に医療を受けている国内の患者は300万人以上で、人口当たりの人工透析患者数は先進主要国の中で日本が最も多い。医科診療医療費(約29.3兆円)のうち、糖尿病による医療費は約1.2兆円を占めているほか、人工透析の年間医療費は約1.57兆円に達しており、医療費全体から見ても大きな課題となっている。
こうした状況を改善しようと、厚労省と日本医師会、日本糖尿病対策推進会議が昨年4月、糖尿病性腎症の重症化予防プログラムを策定。重症化するリスクの高い人が腎不全や人工透析に移行するのを防ぐため、対象者を選定する際の考え方や介入方法などを示していた。
WGの報告書は、これを後押しして取り組みを広げる狙いがある。例えば、市町村と医師会、かかりつけ医の連携が不十分な地域では、市町村のみで単独事業を行うのではなく、地域の医師会やかかりつけ医と事業の枠組みの問題意識を共有し、合意形成を図ることが重要との見解を示し、「個々の患者の状況に応じた対応を確保しつつ進める連携体制の下で取り組むことが必要」としている。
その上で、かかりつけ医との連携の枠組みができた場合でも、かかりつけ医が連携することに意義を見いだせなかったり、連携につながるような関係づくりができていなかったりする地域もあると指摘。都道府県などが市町村の担当者や医師会に連携の具体的な効果や連携に必要な調整の方法などを伝えるよう促している。
また、人工透析導入者の減少といった分かりやすい指標を用いて、成果が見えるようにしなければ、取り組みの動機付けや見直しにつながらないと説明。「重症化予防の目的は、腎不全、人工透析への移行の防止であることを考慮すると、その成果である新規透析導入者数または腎機能を評価するeGFRの変化も合わせて評価することが望ましい」としている。
出典:医療介護CBニュース