マイナビDOCTOR 編集部からのコメント
日本脳炎のワクチン「エンセバック皮下注用」の出荷を化血研が中止しました。
昨年おきた熊本地震でワクチン生産設備が被害を受け、昨年度生産量が前年の半分になり、在庫がなくなったことや、昨年来の北海道での定期接種開始による使用量の増加が原因です。
阪大微生物病研究会でもワクチンを製造しているため、化血研はそちらの使用も促しています。
厚生労働省は、ワクチンの全国的な不足は生じない見込みとしていますが、都道府県に安定供給に向けた取り組みを行うよう要望しました。
化学及血清療法研究所(化血研)は9日までに、日本脳炎ワクチン「エンセバック皮下注用」の在庫がなくなり、出荷できなくなったことを明らかにした。熊本地震で生産設備が被害を受けて減産を強いられたことや想定を上回る需要があったことが原因だという。他社製品への切り替えに伴い、一部の地域や医療機関でワクチンが不足する恐れがあるため、厚生労働省は都道府県に対し、地域間の偏在を確認した場合、供給の調整を行うよう求めている。【新井哉】
化血研によると、昨年4月に起きた熊本地震でワクチンの生産設備が被害を受け、昨年度の生産量は前年度の半分程度まで落ち込んだ。また、定期接種対象の地域から外れていた北海道が昨年度から定期接種を始めるなど、国内の市場が拡大した影響もあり、想定を上回る需要があった。
すでにワクチンの出荷を止めており、卸売販売業者などにある在庫も2カ月ほどでなくなる見通し。現在生産中のワクチンについては、来年度をめどに出荷する予定。阪大微生物病研究会(阪大微研)でも日本脳炎のワクチンを製造しており、入手が困難な場合は阪大微研の製品を使用するよう促している。厚労省は「現時点において、全国的な不足は生じない見込み」と説明している。
しかし、化血研から阪大微研の製品への切り替えに伴い、一部の地域や医療機関で一時的に不足する恐れもあるため、厚労省は都道府県に対し、安定供給に向けた取り組みを行うよう要望。具体的には、▽各都道府県内の卸売販売業者・医療機関の在庫状況を3日間程度で把握することが可能な体制づくり▽市区町村で偏在を確認した場合、卸売販売業者らと情報を共有し、未接種対象者からの問い合わせに対応する▽医療機関が予約・注文を行う際、過剰な発注を控える-などを挙げている。
卸売販売業者に対しても「地域間、営業所間の在庫融通を積極的に行うとともに、必要量の供給を随時行い、偏在が起こらないよう配慮する」としており、都道府県・市区町村と連携して対応するよう求めている。
日本脳炎は、日本脳炎ウイルスに感染した豚を蚊が吸血し、その蚊を介して人に感染。嘔吐や高熱などの症状を伴うが、治療は対症療法のみで、意識障害や麻痺など神経系の障害を引き起こすケースもある。人から人への感染はない。1991年以前は年間50人を超える患者が出たことがあったが、92年以降は年間10人前後となっている。
出典:医療介護CBニュース