マイナビDOCTOR 編集部からのコメント
2015年に国が策定したオレンジプランでは、来年度末までに認知症疾患医療センターを大幅に増やし、約500カ所設置する目標ですが、昨年末の段階で375カ所にとどまっています。
そこで厚生労働省は、病院の設置用件を緩和することにしました。
今まで指定を受けていた「基幹型」と「地域型」以外に、CT(コンピューター断層撮影)装置などを持たず検査体制が両者ほど整っていない「診療所型」でも指定を受けられるようにします。
厚生労働省は、認知症の鑑別診断などの専門医療を担う認知症疾患医療センターについて、病院の設置要件を緩和することを決めた。病院が指定を受けられるのは、CT(コンピューター断層撮影)装置などを備えて検査体制が整った「基幹型」と「地域型」に限られていたが、4月以降はCTを持たない「診療所型」でも指定を受けられるようにする。設置要件のハードルを下げることで病院の参入を促したい考えだ。【新井哉】
国が2015年1月に策定したオレンジプランでは、来年度末までに認知症疾患医療センターを全国で約500カ所設置する目標を掲げている。国は「計画的に整備を図っていく」としているが、認知症専門医の確保が困難な地域もあり、指定は全国で375カ所(昨年12月末現在)。直近の約半年間で10カ所程度しか増えておらず、目標の達成は厳しい状況だ。
認知症疾患医療センターは、「基幹型」(総合病院)と「地域型」(単科精神科病院等)、「診療所型」の3つに分類されており、それぞれの役割も違う。例えば、「基幹型」は単独でBPSD(認知症の周辺症状)と身体合併症の対応が求められるが、「地域型」と「診療所型」は、急性期入院治療を行う医療機関との連携体制を確保すれば、施設要件が満たされる。
「基幹型」と「地域型」の整備が進む一方、14年度に設置要件が設定された「診療所型」は全国で25カ所(昨年12月末現在)と伸び悩んでいる。ネックとなっているのが、多くの精神科の診療所で満たすことが難しい施設要件。精神保健福祉士や保健師などを確保しなければならない上、CT装置やMRI(磁気共鳴画像)装置を使った検査や急変した患者の入院治療で他の医療機関との連携が欠かせないためだ。
厚労省は、増加傾向の認知症患者の診療体制を確保するためには、認知症疾患医療センターの指定目標を引き下げず、全国で整備していく必要があると判断。これまで他の医療機関との連携確保や人員配置の基準を満たしているにもかかわらず、CTを持たないために検査体制の条件を満たせなかった病院についても、「診療所型」で指定を受けられるよう設置要件を緩和し、都道府県による指定を後押ししたい考えだ。
厚労省の要件緩和を先取りした動きも出てきた。東京都は今月7日に開かれた都認知症対策推進会議の認知症医療部会で、病院が「診療所型」でも応募できるように都の要件を変更したことを報告した。都は全市区町村で認知症疾患医療センターを指定する目標を掲げており、厚労省の要件緩和を適用して「空白地」となっている6市町村での設置を目指す。
出典:医療介護CBニュース