マイナビDOCTOR 編集部からのコメント
放射線画像診断で知られる遠隔画像診断ですが、日本病理学会は、デジタル病理画像を使った病理診断の手引きを作成しました。
画像の取り込みや転送方法、保存方法・期間、病理診断報告(レポーティング)に関する説明が同学会ウェブサイトに公開されています。
現在は病理標本を送付しなければ病理診断科・病理診断管理加算を算定できませんが、同学会は厚生労働省に対して、一部デジタル画像でも診断ができるように求めています。
日本病理学会は、デジタル病理画像を使った病理診断の手引きを作成し、ホームページで公開した。遠隔病理診断を行うことを想定し、画像の取り込みや転送方法、保存方法・期間、病理診断報告(レポーティング)に関する留意事項が盛り込まれている。【新井哉】
遠隔画像診断は現在、放射線画像で行われているが、病理診断に関しては保険医療機関の間で病理標本を送付しなければ病理診断料・病理診断管理加算を算定できない。また、病理医がいない医療機関が少なくないため、病理画像を遠隔画像診断で使える環境を整えて医師不足を補うことを求める声も出ている。
こうした状況を踏まえ、同学会は厚生労働省に対し、スライドガラス標本の全体や一部をデジタル画像化した「WSI(Whole Slide Imaging)」による画像転送でも診断ができるよう求めてきた。
同学会が作成した手引きは、保険診療の枠組みでデジタル病理画像を活用した遠隔病理診断(デジタルパソロジー)が将来実施される場合を想定し、▽デジタルパソロジーが可能な検体の種類▽使用機器の基準▽画像の取り込みや転送方法▽画像の保存場所や期間▽レポーティング―などの留意点を挙げている。
例えば、デジタル画像の質が病理診断を左右するため、画像取り込み装置(WSIスキャナー)は「最も重要な機器の1つ」と指摘。モニターについても「色再現性に優れ、画素ピッチ(画素1つあたりのマスの大きさ)の細かいWSI画像表示用の高品質のモニターが必要」としており、ピロリ菌や結核菌の同定といったWSIでは比較的困難とされている分野も「画素ピッチで解決できる可能性がある」としている。
また、専用のネットワークがなく、インターネット回線を利用する場合は「セキュリティーも重要な留意点」と指摘。診断を行ったWSI画像は「医療情報(カルテ情報)として扱う必要があり、それに準じて電子保存しなければならない」とし、保存方法と保存場所は医療情報セキュリティー部門と協議して、施設ごとに規則を定めることを促している。
出典:医療介護CBニュース