マイナビDOCTOR 編集部からのコメント
技術が進歩し、内視鏡手術のカメラやモニターはどんどん見やすく高精細になっています。総務省は低侵襲性が評価された8K技術を内視鏡手術に採用することを提案。高精細・高い臨場感で遠隔地の医療にも貢献できるとしています。
欠点はデータが大容量なことで、圧縮技術と設備の整備が問題となりそうです。
総務省は、高精細で自然の色合いに近い8K技術の医療への応用を議論してきた検討会の報告書を公表した。低侵襲性が評価されてニーズが高まっている内視鏡手術に8Kの技術を採用することを提案。手術システムに採り入れることで「執刀医のみならず手術チーム全員が、比較的大画面のモニターを通して高精細な映像をリアルタイムで共有することが可能」としている。【新井哉】
精細さ損なわずに術野拡大の利点
医療分野の8K技術をめぐっては、総務省のICT(情報通信技術)を議論した検討会が昨年まとめた報告書で、内視鏡手術のカメラやモニターに8K技術が採用された場合、「開腹手術で術部を見ながら施術する状況に限りなく近い高精細・高い臨場感の下で内視鏡手術が実現可能になる」と指摘。遠隔医療の活用についても「へき地における病理診断の質の向上が図られる」としていた。
こうした指摘などを踏まえ、8K技術の検討会で今年4月から、8K技術を活用した内視鏡の開発に向けて必要となる技術的な課題や手術現場のニーズ、医療機関・患者へのメリットなどを議論してきた。
報告書では、8Kが現行のハイビジョンの2Kに比べて16倍の高解像度となっているだけでなく、自然の色が実物に限りなく近い表現ができる広色域性や、速い動きもスムーズに捉える高フレームレートなどを備えていることを強調。「8K技術を内視鏡に採り入れることによって、さらなるメリットが医療現場にもたらされる可能性がある」としている。
広視野角のメリットを最大限生かし、腹腔内の上部に腹腔鏡を固定することを提案。俯瞰的に術野を撮影することができるほか、高精細画像であるため、患部を拡大しても精細さが損なわれず、必要に応じて特定の術野を拡大して診断や処置ができるという。
遠隔地の病理医に画像伝送し転移確認も
従来の腹腔鏡は映像が不鮮明なため、がん細胞の取り残しなどの課題があることに触れ、「8K技術により、術野を高精細に捉え、どこまでがんが進展しているのか、あるいは最深部の血管の状況が分かるような色の変化を捉えることができる」と説明している。
8K技術を病理診断で活用することも提案。手術中に迅速診断が必要な場合、病理医が近くにいなくても、遠隔地の病理医に画像を伝送し、がん細胞の取り残しや転移の有無などが確認できるという。
ただ、現時点のネットワークの容量を前提とした場合、大容量の8K映像の伝送には圧縮技術が不可欠として、圧縮映像を復元する際、技術的な制約で色合いが損なわれないように、診断に耐え得る圧縮や伝送、復元の技術的要件を確立する必要性を挙げている。
出典:医療介護CBニュース