マイナビDOCTOR 編集部からのコメント
アルコール健康障害対策推進基本計画が閣議決定されました。アルコール依存症の生涯経験者は100万人を超えるとの報告もありますが、診療が可能な医療機関は全国的に不足しています。相談先がわかりにくいとの指摘を受けて内科・救急と専門医療機関の連携を整備し、すべての都道府県に、アルコール依存症に対して適切な医療を提供できる専門医療機関を1カ所以上設置という目標値を設定しました。
診療可能な医療機関は「全国的に不足」
基本計画では、アルコール依存症の生涯経験者(診断基準の該当者・過去の該当者)が100万人を超えるとの報告があることなどに触れ、「飲酒をしていれば、誰でもなる可能性がある」と指摘。健康障害の発症頻度の高い臓器障害として、アルコール性肝疾患を挙げ、アルコール性脂肪肝として発症後、飲酒の継続で肝炎、肝線維症に移行し、「アルコール性肝硬変や肝細胞がんへ進行する」と注意を促している。
こうした状況を踏まえ、2016年度から20年度までの基本計画の期間中に、健康障害に関する予防から相談、治療、回復支援までの切れ目のない支援体制の構築や、飲酒のリスクに関する知識の普及について、重点的に取り組む方針だ。
特に医療分野の基本的な方向性については、「アルコール健康障害への早期介入を含め、一般医療機関と専門医療機関との連携を推進する」と記載。診療が可能な医療機関が「全国的に不足している」とし、治療拠点となる専門医療機関を整備することを盛り込んだ。
救急や内科などの一般医療機関と専門医療機関の連携推進も
さらに、アルコール依存症に適切な医療を提供可能な専門医療機関を都道府県に「1カ所以上」とする目標値を設定。受診者が多いと考えられる救急や内科などの一般医療機関と専門医療機関との連携を推進する必要性を挙げている。
アルコール関連の問題の相談支援を行っている精神保健福祉センターや保健所などの問題点も指摘。「どこに相談に行けば良いか分からず、適切な相談や治療、回復につながっていない」といった指摘があるため、地域で相談体制を確保する方向性を示している。
全国の中心となる専門医療機関を定め、研究や治療、人材の育成を図ることや、早期の発見・介入を図る観点から、医療従事者向けの研修プログラムを開発することも明記。「アルコール依存症が疑われる者を適切な治療に結び付けるため、医療関係者の技術の向上に取り組む」としている。
出典:医療介護CBニュース