看護師として働きながら、医師を目指してダブルライセンスの取得を検討している人もいることでしょう。より専門性の高い医療を提供したいという思いや、かつて医師を目指していた気持ちがよみがえったからなど、さまざまな志望動機が考えられます。この記事では、看護師から医師を目指す人に向けて、医師になる難しさやメリット・デメリットなどについて解説します。
<この記事のまとめ>
- 看護師から医師になるには、幅広く高度で膨大な量の学習が必要なため、医学部への受験を含め、覚悟をもって臨む必要がある。
- 医師になるには、医学部へ編入・編入学する、海外で医師になる方法がある。
- 看護師から医師へ転職するメリットとして、キャリアの選択肢が広がる、給与が上がる、専門性の向上・責任と権限が拡大することが挙げられる。
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1.看護師から医師になることは難しいのか
看護師として経験を活かし、さらなるキャリアアップを目指したい方にとって、医師への転職は魅力的な選択肢の1つです。医師として、より高度な医療知識や技術を駆使し、患者さんの治療方針を決めたり、実際に治療を行ったりする仕事は、プレッシャーもありますが、乗り越えた時の達成感は格別でしょう。しかし、看護師から医師になる道のりは決して簡単ではありません。どのような点で難しさを感じるのか、その理由についてまとめました。
1-1.医学部に入学・履修することにハードルがある
医師を目指すには、6年制の医学部に入学する必要がありますが、医学部入試は競争率も激しく、高い学力が求められます。一般的な科目での受験となるため、まずは入試のためにしっかり勉強時間を確保する必要があるでしょう。
なお、文部科学省によると令和5年度時点で医学部医学科に入学した人数は、以下のように報告されています。
受験者数合計(人) | 合格者数合計(人) | 合格率(%) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
男 | 女 | 男 | 女 | 男 | 女 | |
国立大学 | 9,570 | 6,196 | 3,015 | 1,753 | 31.5 | 28.3 |
公立大学 | 1,754 | 997 | 566 | 299 | 32.3 | 30.0 |
私立大学 | 52,569 | 38,860 | 4,589 | 3,582 | 8.7 | 9.2 |
※調査に対して各大学からの回答を文部科学省において取りまとめられたもの(編入学は除く)
出典: 文部科学省|医学部医学科男女別合格率(R5年度選抜)
医師になるために必要な知識や技術は、看護師として身につけた知識とは大きく異なるところもあります。看護学校と医学部では受験科目が異なり、看護師の経験があっても、高卒からスタートする学生と同じように、学び直さないといけない科目もあるでしょう。
看護師として働きながら受験する場合、仕事と受験勉強を両立することになりますが、それだけでもかなりハードルが高いと考えられます。入学後は、解剖学や病態生理、薬理学の作用機序などを理解し、鑑別診断の考察を踏まえた正しい診断、非典型的な症状にも対応した診療技術を身につけることになります。看護師が学ぶ医学的知識は、医師が学ぶ知識のごく一部です。看護師から医師になるには、幅広く高度で膨大な量の学習が必要なため、医学部への受験を含め、覚悟をもって臨む必要があるでしょう。
1-2.経済的な負担が大きい
医学部での学びは6年間に及び、その分の学費が必要です。さらに、生活にかかる費用も加わるため、トータルした経済的な負担は多額になります。日中を医学生として、夜を看護師として働くことも可能ですが、勉強時間を確保することを考えると、かなり厳しいと考えられます。現状の看護師として得られている収入を確保できないことを前提に、生活費を含めた費用がどれくらいかかるのかを計算しておくことが大切です。
1-3.医師として一人前になるまでに時間がかかる
医学部入学後、医師国家試験を受験するまでに6年間の学びが必要です。さらに、医師免許取得後も、2年間は初期研修医としてローテーション勤務を行い、3年目以降は専攻医として資格取得のために学ぶ期間が続きます。専門医取得に必要なプログラム履修は3~5年の研修期間が一般的で、医学部入学から専門医になるまで10年以上の時間がかかることを理解しておかなければいけません。
タイミングにもよりますが、専門医になるころには40代を過ぎてしまう可能性もあります。医師は生涯働き続けられる職業ではありますが、年齢とともに体力的な問題も出てくるため、キャリアプランを考えて早めに取り組む必要があるでしょう。
2.看護師から医師になる方法
看護師から医師を目指すには、医学部への入学や編入学後、医師国家試験に合格する方法が一般的です。そのほか、海外で医師免許を取得するのも一案です。より効率的に医師を目指すための方法を考えてみましょう。
2-1.医学部へ入学・編入学する場合
看護師になるまでの学歴によって、医学部への一般入試か、編入かを検討します。
一般入試の場合、基本的には「大学入学共通テスト」と、大学ごとに実施される個別試験の「前期日程」や「後期日程」を受験することになります。国公立の場合、通常、前期日程での募集定員が多く、定員数が少ない後期日程で合格するのは、より狭き門となります。なかには後期日程を廃止している大学もあるため、前期日程で合格するつもりでゴールを見据えるとよいでしょう。
ただし、一部の私立大学では、共通テストがなく、大学独自の試験が行われることもあります。日程を調整しながら、複数の大学を受験し、合格の可能性を高めましょう。
看護師として働きながらの受験を予定する場合には、医学部予備校や通信講座を利用して学習スタイルを確立するのも一案です。独学で学習に臨むには、自己管理能力が問われるでしょう。
なお、2008年より、医学部入試の特定選抜枠となる「地域枠」が設けられています。医師不足の地域で一定期間勤務することを条件に、入試の難易度が下がる仕組みです。卒業後に指定された医療機関または、地域で働くことで奨学金の返済が免除されるなど、地域ごとにさまざまな特徴があります。上手に活用するとよいでしょう。
また、看護師になる過程で、学士号を取得している人や取得見込みの人は、編入学を目指すことが可能です。ただし、編入先によって条件が異なるため、事前に確認しておきましょう。試験科目は「生命科学」や「小論文」などが重視されるなど、問われる内容も一般入試とは異なります。通常は2年次への編入となり、医師免許取得までの道のりが縮まります。大学を卒業した人が対象となるため、条件に合う場合には、編入学試験も検討してみましょう。ただし、編入は一般入試以上に狭き門です。
入学後の学費負担が気になる場合には、日本学生支援機構奨学金や、国の教育ローンなどの経済的支援を利用する方法があります。受験を検討する前に、条件をしっかり確認しておくことが大切です。
2-2.海外で医師になる
国際化が進んでいる現代において、海外の医学部を受験する方法もあります。進学先の国で医師免許を取得し、現地で医師として働くことを希望する場合におすすめです。なお、日本で医師として働きたいのであれば、日本の医師国家試験受験資格の認定を経て、国家試験に合格しなくてはいけません。
海外には、日本の医学部に比べて、比較的受験レベルが低い国や、学費が安い国もあります。ただし、学力に加えて、外国語のスキルも必要です。入学は容易でも卒業条件が厳しいケースなどもあります。留学生への対応は、国別に特色が異なるため、十分な情報収集のうえで自分に合った国を選ぶ必要があるでしょう。
3.看護師から医師へ転職するメリット
医師免許取得までのハードルはあるものの、看護師から医師へ転職するメリットは多くあります。
3-1.キャリアの選択肢が広がる
医師のキャリアは多岐に渡ります。医師免許があれば、自身が院長となってクリニックを開業することが可能で、自分の理想とする医療を提供できるでしょう。また、医学研究に携わることで、新しい治療法や医療技術の開発などで、貢献することも可能です。看護師としての経験を活かして、医学部や看護学の分野で教鞭を取り、次世代の医療従事者の育成に携わるなど、さまざまなキャリアを検討できます。
[医師のキャリアにはどんな選択肢がある?]
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3-2.給与が上がる
医師になると年収アップが期待できます。厚生労働省が発表した「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、看護師の平均年収が508万1700円(平均年齢41.9歳)※であるのに対し、医師は1436万4700円(平均年齢46.1歳)※と倍以上の差があります。もちろん、経験によって昇給するために、医師になった初年度から平均年収レベルの金額を受け取ることはできません。とはいえ、生涯年収を考えると、収入が大きく増えるのは間違いないでしょう。
参考:令和5年賃金構造基本統計調査(職種)第1表|e-Stat
※きまって支給する現金給与額×12カ月分+年間賞与その他特別給与額で算出
[医師の給与について知りたい!]
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3-3.専門性が向上し、責任と権限が拡大する
医師は、診断や治療の最終決定を行う権限をもっています。その分、責任は重大ですが、大きなやりがいを得ることができるでしょう。患者さんの治療方針を自ら決定することで、より包括的なケアを提供できます。看護師の経験を活かして、細やかな配慮を行うことも可能です。さらに、看護師の業務内容を把握していることが強みとなり、医療チームのリーダーとして重要な役割を果たすなど、深く医療と関わることができます。
4.看護師から医師へ転職するデメリット
メリットがある一方で、デメリットもあります。例えば、医師としての責任は非常に重く、常に高いプレッシャーと向き合うことになるのもその1つです。
患者さんの命に直接関わる決定を行うことになり、重要な判断を迫られるストレスは避けられないでしょう。また、日進月歩の医療業界では、常に最新の情報を得て、患者さんに適切な治療法を選ばなくてはいけません。インターネットが普及した今、患者さん側も医療の知識が豊富です。看護師時代以上に、高度な学びを続ける自己研鑽と継続力が求められます。
加えて、長時間の勤務や緊急対応が求められることが多く、看護師以上に、医師はハードワークになりがちです。医師の働き方改革も進んでいますが、人手不足により、まだまだ医師の負担も少なくありません。通常の診療業務に加えて、書類作成や会議、論文作成なども多く、時間に追われる日々が続きます。看護職とは違って休日が確保されにくい可能性があることも、デメリットと言えます。
医師を目指す際には、これらの現実を理解して自分の進路を考えることが重要です。
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5.看護師から医師への挑戦は可能
看護師から医師を目指すには、厳しい学習環境のなかで、医学部への入学や国家試験の合格を目指すという高いハードルがあります。多くの時間を要し、経済的な負担も避けられません。その道は、決して簡単ではありませんが、努力を惜しまなければ実現は可能です。どのようなキャリアを実現したいのか、社会ニーズや将来の展望を踏まえたうえで、情報収集を徹底し、具体的な目標を設定することが大切です。
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