シーリング制度とは?対象の都道府県・診療科や医師が注意すべきポイントを解説|医師の現場と働き方

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シーリング制度とは?対象の都道府県・診療科や医師が注意すべきポイントを解説

2018年からスタートした新専門医制度に伴い、条件に応じて専攻医の採用数上限を設ける仕組みとして「シーリング制度」が導入されました。この制度は、特定の地域や診療科に応募が集中して医師偏在になっている現状を是正するために導入されたものです。今回は、シーリング制度について、その概要と共に、導入となった背景や対象となる診療科、注意点などについて詳しく解説します。

<この記事のまとめ>

  • シーリング制度とは、専攻医の採用定員数に上限(シーリング)を設けて、必要医師数を確保できている地域・診療科への応募集中を防ぐ仕組み。
  • シーリング制度の影響で希望施設に採用されなかった場合、次の募集期間に同じ施設に応募することはできるが、地域・診療科の候補を複数検討しておくのが◎。
  • シーリング制度は定期に見直される予定のため、最新情報のこまめなチェックが必要。

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1.シーリング制度とは

シーリング制度とは、専門医の資格取得過程において、養成する専攻医の採用定員数に「上限(シーリング)」を設け、必要医師数を確保できている地域や診療科への応募集中を防ぐ仕組みを指します。

医師不足が続く中、以前から課題視されていたのが、臨床医の地域偏在と診療科偏在です。都市部と地方での医師数に偏りがあることで、十分な医療を受けられないケースもあり、地域医療体制の充実に向けた対策が進められていました。

そうした中、2018年度より新専門医制度がスタートし、カリキュラムの要件が厳しくなったことから、専門研修プログラムに対応できる基幹病院の数が限られてしまう結果に。また、専攻医は研修を希望する医療機関の重複応募ができないことから、一部の地域や診療科に多くの応募が集まりやすい状況となりました。

そこで、各地域や診療科の必要医師数を考慮し、必要医師数に達している診療科に対して、専攻医の採用定員数に「上限(シーリング)」が設けられることになりました。必要医師数が確保できていない地域で研修を実施することで、その地域で働く臨床医を充実させることも目的の一つとなっています。

2.シーリング制度における都道府県別採用数の傾向

シーリング制度では、採用数の一部を「連携プログラム」枠とし、研修プログラムの50%以上をシーリングが設けられていない都道府県で行うこととされています。さらに「連携プログラム」枠の一部(上限5%)では、研修プログラムの50%以上を医師不足が顕著な地域で行います。なお連携プログラム(地域研修プログラム)とは、「医師充足率が高くない地域での専門研修期間が1年6カ月以上に達しているもの」を指します(日本専門医機構サイトより)。

年度ごとに効果が評価され、その都度、調整が加えられているため、実際の採用数は毎年同じではありません。

2-1.2022年度の内科におけるシーリング数

一般社団法人日本専門医機構が公開している「2022年度プログラム募集シーリング数」より、参考として、内科においてシーリングが設定されている都道府県とシーリング数を見てみましょう。

■内科におけるシーリング数

都道府県 シーリング数 連携プログラム数 連携プログラムのうち都道府県限定分 シーリング数合計(通常+連携)
東京都 398 123 31 521
京都府 62 18 5 80
大阪府 200 10 2 210
和歌山県 20 3 1 23
鳥取県 15 1 0 16
岡山県 55 7 2 20
徳島県 16 4 3 147
福岡県 118 29 7  
長崎県 33 4 3 37
熊本県 33 0 0 33

上記は内科のケースですが、診療科ごとにシーリングの対象となる地域や人数は異なります。

2-2.2023年度専攻医募集におけるシーリング案

2022年までのシーリング制度実施において、都市部周辺で専攻医が増加する効果が現れているものの、東北地方等での地域偏在については、是正効果が限定的であると評価されていました。そのため、2023年度のシーリングでは、別途、足下充足率(医師数と必要医師数の比)が低い都道府県との「特別地域連携プログラム」を設けることが提案されています(2022年6月現在)。

「特別地域連携プログラム」で連携先となるのは、原則「足下充足率が0.7以下であり医師不足がより顕著な都道府県」です。採用数は原則として都道府県限定分と同数であり、研修期間は全診療科共通で「1年以上」となります。ただし、特別地域連携プログラムの連携先、採用数については、診療科別の個別事情も考慮して設定されます。

また、2023年度のシーリングでは、育児介護休業法改正附帯決議への対応の観点から、子育て世代の支援を重点的に行っているプログラム(育児と仕事を両立できる職場環境が整っている医療機関で研修を行うプログラム)では「特別地域連携プログラムの設置」を条件に、基本となるシーリング数に加算(原則1名)を行うことが決定されています。

以下が、2018年の専攻医採用実績と、2022年の採用暫定数です。希望するエリアが決まっている専攻医や、今後、専攻医となる方は参考として確認しておきましょう。

■2018年専攻医の採用実績と2022年の採用数暫定値

  2018(平成30)採用実績 2022(令和4)採用数暫定値
東京都 1,824 1,748
福岡県 450 463
大阪府 649 679
神奈川県 497 641
福島県 86 86
山形県 55 54
宮城県 159 182

3.シーリング制度の対象となる診療科

厚生労働省が発表した、シーリング制度の対象となる診療科は、以下のとおりです。

・「2016年医師数」が「2016年の必要医師数」および「2024年の必要医師数」と同数あるいは上回る都道府県別診療科
・例外として、外科・産婦人科・病理・臨床検査・救急・総合診療科の6診療科はシーリングの対象外とする

(参考:専攻医におけるシーリングについて|医療従事者の需給に関する検討会第32回 医師需給分科会|厚生労働省[令和2年1月29日]

2023年度分について具体的な数値は出ていませんが、一般社団法人日本専門医機構が公開している「2022年度プログラム募集シーリング数」を参考に、シーリングが設定されている都道府県を診療科別に、一部見てみましょう。

■シーリングが設定されている都道府県の例(診療科別)

内科 小児科 皮膚科 精神科 整形外科 眼科
東京都

京都府

大阪府

和歌山県

鳥取県

岡山県

徳島県

福岡県

長崎県

熊本県

東京都

滋賀県

京都府

岡山県

長崎県

東京都

神奈川県

京都府

兵庫県

福岡県

 

東京都

石川県

岡山県

福岡県

佐賀県

熊本県

沖縄県

東京都

石川県

京都府

大阪府

和歌山県

福岡県

長崎県

熊本県

東京都

京都府

大阪府

兵庫県

福岡県

泌尿器科をのぞく、全ての診療科において東京都はシーリング数が設定されていました。診療科によってシーリングの対象となる都道府県が異なるため、事前の確認が必要です。

4.シーリング制度下で専攻医が注意すべきポイント

今後も調整されることが考えられるシーリング制度。そうした中で、専攻医が注意すべきポイントがあります。

4-1.対象や例外などが変更になる可能性がある

シーリング制度は、今後も定期的な見直しが実施される予定で、対象になる診療科や地域、人数のほか、例外のケースなどについても変更される可能性があります。研修プログラム応募時には、過去にリサーチした情報と変わっている場合もあるでしょう。希望する領域や基幹施設の状況を踏まえて、最新情報を確認しておくことが大切です。

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4-2.希望の条件で採用されなかった場合を考えておく

シーリング制度が影響したことなどが原因であっても、希望する基幹施設に採用されなかった場合は、次の募集期間に応募することになります。最終調整期間に同じ施設に応募することは可能です(日本専門医機構「専攻医の方 よくある質問」より)が、キャリアプランを考えると、不採用は大きな痛手となるかもしれません。希望する領域や基幹施設の変更も踏まえて、いくつかの候補を検討しておくとよいでしょう。

4-3.シーリング対象外となる「地域枠」を考慮する

「地域枠」など条件によっては、シーリングの対象外となる場合があります。

以下の①または②の医師のうち、専攻医期間に医師少数区域又は医師少数スポットで専門研修を行う予定の方は都道府県別・診療科別シーリングの対象外となります。

①都道府県と卒業後一定期間、当該都道府県内で医師として就業する契約を締結した方(修学資金の貸与の有無を問わない)
②自治医科大学を卒業した医師

※大学が独自に設置している地域入試枠等は含まれません。
※最終的には、上記該当者のうち、本人の同意の下、各都道府県の地域医療対策協議会が認定した方が、シーリングの対象外となります(自己申告制ではありません)。
(参照:専門研修制度に関して|Q:地域枠対象の専攻医とはどのような方ですか。|一般社団法人日本専門医機構より [2023年3月1日時点]

上記の場合には、シーリング対象外となるため、希望が通りやすいと考えられます。自身の条件を確認してみましょう。

5.希望に合ったキャリアプランをかなえるために

専門医へのステップアップは、今後のキャリアを左右するものです。シーリング制度をしっかりと理解し、希望のステージに進みましょう。将来のキャリアを考慮するには、まずキャリアプランを明確に立てることが大切です。キャリアプランの立て方がわからない場合は、医師専門のエージェントに相談してみるのもよいでしょう。自分の希望に合った施設で研鑽できるよう、こまめな情報収集に努めることが大切です。
 
 

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[医師のキャリアにはどんな選択肢がある?]
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PROFILE

監修/小池 雅美(こいけ・まさみ)

医師。こいけ診療所院長。1994年、東海大学医学部卒業。日本医学放射線学会・放射線診断専門医・検診マンモグラフィ読影認定医・漢方専門医。放射線の読影を元にした望診術および漢方を中心に、栄養、食事の指導を重視した診療を行っている。女性特有の疾患や小児・児童に対する具体的な実践方法をアドバイスし、多くの医療関係者や患者さんから人気を集めている。

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